記憶の底へ

f植物園の巣穴

f植物園の巣穴

 梨木香歩の新作です。今まで以上に異界感たっぷりで、初めのうちはいったい夢なのか現なのか、過去なのか現在なのか分かりません。でも主人公自身がそういう「常識的」感覚から抜け出ると、こちらもそれに伴って読みやすくなってきます。主人公の心象風景を旅するような物語です。そしてその旅の果てに主人公の回復が語られるあたりは、心理療法のようでもあります。