金子光晴の晩年随筆三部作を読み終わりました。第二部の『ねむれ巴里』で妻三千代をヨーロッパに残したまま、日本へ向けて先にアジアで旅費を稼ぐために旅立ったが、先に三千代が帰って来ることになった、という顛末まで書いてありますが、この、『西ひがし』では、その東南アジアでの徘徊の様子を書いています。途中で捨てたはずの詩が甦ってきたと書いてある箇所もあり、全体的なトーンも一部や二部よりも若干明るくというか、脱力した感じで、絶望の末に突き出た感じです。