本屋をさまよっていると、探している本ではない本と出会ってしまい、何となく手に取ったまま、立ち読みのまま読み切ってしまったり、買い込んでしまったりするものです。

となりのウチナーンチュ

となりのウチナーンチュ

 青森県出身で沖縄に在住の作者が、沖縄生まれ沖縄育ちの人に取材しながら書いたというだけあって、今の本当の沖縄が描かれているのでしょう。僕も沖縄に行ったことがないので、勝手に沖縄を想像していて、この本を読んで、へえぇーという部分がたくさんありました。その辺は「ちゅらさん症候群」に書かれています。ストーリーは作家志望の父と二人暮らしの16歳の女の子のアパートの隣に、これも父と二人暮らしの同じ年の娘が東京から引っ越してきて、4人の家族ぐるみのつきあいが始まり、アパートの4階に住んでいる青年もともにうち解けていくお話です。東京からやってきた女の子は、学校でいじめられて不登校になり、高校には通っていません。学歴第一のお母さんから逃げるようにして父と二人で沖縄にやってきたのでした。一方作家志望の父は夢を追い、生活力は0で、妻は逃げ出してしまい、貧しさのために高校には行けない娘は、父に悪態をつきながらも、父を慕っています。こんないろいろと「ふつう」ではない4人が何ということもない日常を通じて癒されていきます。僕はこの人の作品は初めて読んだのですが、結構「霊」なんかが登場する作品を書く人らしく、この作品にもそういうのが出てきます。しかしあんまり非現実的な感じがしないのが特徴でしょうか。
わたしの母さん

わたしの母さん

 この本は20年前に出版された時に、賞も取った、よい児童文学書だったらしいですが、出版社が倒産して絶版になっていたものが復刊されたものです。
 知的な障がいを持つ父と母を持つ、小学4年生の高子は、両親のことが疎ましくてならなくなっています。しかし高子には両親が障がい者であることは秘密にされていたので、なぜ両親が周りの友達の親たちと違うのか、人から笑われるようなことをするのか、計算ができなかったり、むずかしい文字が読めなかったりするのか分かりません。高子は成績優秀ですが、小学校にある、みどり学級という障がい者学級との交流会に参加したことがなく、むしろ、障がい者を毛嫌いしていました。しかしついに高子が両親の秘密を知るところとなり、大変なショックを受けます。しかし友達の助けや学校の先生、友達の父親、母の高校時代の先生などの理解により、考えを変え、両親の立派さに気がついていきます。実話を本にした話ということで、高子のモデルもすでに母になっており、両親は60歳を超えているそうです。淡々と書かれているのですが、実話の持つ力が胸に迫ります。違っていることを受け入れる大変さと、障がい者以上に、心がこわばって自由ではない健常者が見えてきます。そして違う者同士が一緒になることで、もっとお互いに自由になれる、それが説教臭くなく語られています。挿絵を中学生が描いています。あたたかい絵です。