オードリー・ヘプバーンで有名な映画の原作ですが、僕は残念ながら映画を観たことがないので、それについてコメントのしようがありません。この本は村上春樹が訳しているというだけで読みました。この本には「ティファニーで朝食を」以外に3つの短編が入っています。読んでみて、なるほど、村上春樹が惹かれるのもわかるなあと思いました。「ティファニーで朝食を」には特にそれが見て取れますが、村上春樹の描く作中人物との共通点を僕なりに次のように挙げることができます。それは世間の常識では測れない正直さや真面目さ、潔癖さです。むしろ、一般的には全部逆に、つまり不正直で不真面目で不潔な人間に見られているんだけど、自分なりに守っている生き方のようなものがあって、それを不器用に貫こうとするほど不幸になっていくようなところです。レイモンド・チャンドラーのマーロウにも共通するし、フィッツジェラルドのギャツビイもそうです。そういえば、『グレート・ギャツビイ』の語り手と『ティファニーで朝食を』の語り手は位置的によく似ているなあと思います。『ティファニー』の方がもう少し近いかも知れません。巻末に村上春樹が解説を書いています。とても面白いです。こちらもオススメです。