思考できないものを思考する。

フーコー思想の考古学

フーコー思想の考古学

 フーコーの前期著作を中心に解説した本です。前半は『狂気の歴史』に結実する思想を中心に取り扱い、後半はカントからフーコーに至る思想の流れと、現代哲学の課題まで見通します。
 フーコーの思想で面白いと思うのは、思考できないものを思考し、見えないものを思考しようとする視点だと思います。ある時代にはまったく問題とされないことがらが、ある時点を境として大問題となる、それをフーコーは「狂人」という概念の変遷から描きだします。また、「狂人」が「狂人ではない人」を作りだしていく構造を明らかにしています。すでに「狂人」概念が変化した時代から以前の時代を眺めたとき、もうすでに過去の「狂人」概念は見えないものとされています。歴史が継続的に進んでいくのではなく、断絶を繰り返しながら、不連続に置かれていることをフーコーは明らかにします。これはとても大切な考え方で、歴史が常に新時代の思想によって塗り替えられ、解釈しなおされ、あたかも現在が常に歴史の到達点であるかのように錯覚させられることから、我々を救ってくれます。そこから、「起源」の問題が思考されます。起源について考える時に、Aの起源について考えようとするときに、すでにAがある状態しか経験できない私たちは、Aが存在することを前提として起源について思考するというトートロジーに陥る危険が常にあるということです。言語についてのフーコー思想をカント思想と結びつけながら、後半に解説してありますが、この辺は難解で、カントがよく分かっていないので、十分に消化できませんでした。もう少し勉強が必要です。