ル・グィン
- 作者: アーシュラ・K・ル=グウィン,谷垣暁美
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/11/13
- メディア: ハードカバー
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前三部作『西の果ての年代記』にあった貧しいながらも敬虔に生きる人々、神々とともに生きる人々、地に足の付いた生活感が全編にあふれています。そういう記述を読む度に、この都市生活から逃げ出したくなります。印象としては、ル・グィンの主張がかなりはっきりとラウィーニアを通して語られていると思います。つまり、女性としての強さや女性蔑視への反感や、暴力(戦争)への嫌悪とか。フェミニズムの旗手と呼ばれるゆえんでしょう。しかし、と逆接で続けてよい微妙な部分ですが、子を持つ母としての喜び、子を育てる幸福を描くのにかなりの紙幅を割いています。こう思うのは、ル・グィン自身が何かの講演かインタビューで、フェミニズムの集会に招かれて出席したりすると、まるで子どもを持っていることが罪であるかのように感じられることがあると言っていて、しかし自分は子どもを持ち、育てたことを誇りに思うとも書かれていたので、そのル・グィンの気持ちはよく作品に反映されているなと思いました。
印象に残ったのは、「敬虔」とは何かということをアエネーアスが周囲の人たちに問いかけ、様々な答えを人々がするところです。この作品には他にもしばしば「敬虔」という言葉が出て来て、人の評価の基準になっています。敬虔は最も今の自分には足りないなあと思わされました。