巨人

 ようやく上巻を読み終わりました。古代から書き起こして江戸時代前期までです。通史を書くためには膨大な知識が必要であることは想像できますが、ただ単に事実を書き連ねても意味がありません。そこには思想がなければならないのです。加藤周一が立てている思想は、日本が基本的に此岸的(この世的)であることです。いくつかの例外を除いて見事に通っています。宗教もすべて日本化され、形而上学は形而下に変化させられる。見事です。日本がどうしてこういう形なのかを想像させてくれます。たとえば、今倫理的な部分が崩れてきていると言われていますが、実は元々そういう傾向を持っていたことなど。現世享楽主義は日本人の基本的な姿勢なのかもしれません。今後日本はどこへ行くのか、考える一つの指針となりそうです。