羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)

羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)

 題名は、作者加藤氏が未年生まれということと、羊のようにおだやかな性質の作者自身を表しているらしいです。加藤周一の自伝です。幼少期の渋谷の自宅の様子、小学校、そして受験、中学校、一高時代、東大駒場キャンパス、信州の思い出、そして戦争。疎開、敗戦。加藤周一憲法9条の会の創立メンバーでした。この半生を読むとその源流が見えてきます。戦争へ向かう異常な雰囲気、敗戦を前にした狂気の日本、その中で正気を保ち続ける難しさ。この本には続編があって、戦後が語られていくのでしょう。それにしても、一高時代の、教師が生徒には絶対分からないのを承知で原語で授業をしたり、難解な漢文の授業をしたりして、それを生徒が聞かずに別の予習なんかをしている雰囲気は今と大差ないという気もします。東大はさすがに秀才もいたようで、読んでいる本が違います。これは現代はどうなのだろう。少なくとも自分が大学の頃にこんなに勉強している人はいなかったです。