幻の漂泊民・サンカ (文春文庫)

幻の漂泊民・サンカ (文春文庫)

 サンカとは、定住せず、山から山へ漂泊する無宿者です。柳田国男もその著書で論じています。私は知りませんでしたが、戦前にはサンカ小説なる大衆小説があったらしく、その中でサンカは常人とは違う、異様な生態を持った犯罪者集団のようなイメージがついてしまったそうです。沖浦氏は被差別民の研究で有名な方ですが、本書でも被差別民とサンカの違いや重なり具合を詳細な資料を引用しながら説明していきます。サンカに関する資料はかなり少ないようで、様々な可能性を潰していきながら推論を進めていく下りは小説を読んでいるような面白さです。旧来の説を丁寧に紹介しながらその誤りを正し、新説を組み立てていく様子には無理がなく、納得できます。