『どくろ杯』に続く、
金子光晴の紀行文。先に送り出した妻、三千代を追ってヨーロッパに旅し、フランスはパリでの生活がはじまります。貧困の
どん底で、男娼以外は何でもした金子は、人間の悲哀、文明の表面の明るさの裏にある悲しみや苦しみを知的にではなく、肉感的に感じ取ります。最後はようやく日本に帰ってくるところで終わります。
実在の人物、書聖と言われた川村麒山の伝記です。5歳で書いた書がすでに凡人のそれではなく、ちょうど学制の始まった頃の
尋常小学校4年を2年で卒業し(当時は
飛び級があった)、
静岡県中の小学校を「先生」として書道を教えて周り、
明治天皇から直接お褒めの言葉を頂き、と常人ではない人生を送ります。しかしおごることなく、ひたすらに書に打ち込み、
空海を尊敬して仏教の世界に沈潜し、子どものような感性を持って生きつづけた人です。書道を芸術と世界に認めさせた人でもあります。