赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1)

赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1)

赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫)

赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫)

スタンダールの『赤と黒』と言えば、誰でも知っている「名作」で、題名だけは小学校の頃から知っていましたが、この年になって初めて読了しました。主人公はジュリアン・ソレルという貧しい材木商の三男坊。しかし卓越した学習能力と分不相応な野心により、高級貴族社会に入りこんでゆく。時代はナポレオン失脚後のフランス。貴族社会は徐々に終焉を迎えつつあり、政情は不安定である。財産のないジュリアンはまず、修道院でその能力を開花させてゆく。家庭教師になった地方貴族の妻の愛人になり、そこから出世の道を開いてゆく。最後の破滅に至るまでの出世に次ぐ出世も、ジュリアンの心を満たすことはない。周囲の人々を心の中で軽蔑しながら裏腹な言葉を操りつつ、貴族社会に入りこんでゆく。
 訳者は格差社会と言われるこの時代の若者にこそ読んでもらって再発見されるべき小説と言っています。確かにジュリアンのつぶやきや叫びのいくつかは、そのままこの時代の若者の言葉にスライドできそうです。こう書くと社会派小説のようですが、基本的にこれは恋愛小説です。フランスの時代背景が分かっている方がより面白いのでしょうけれど、僕のようにその辺に不案内でも読むことができます。注も丁寧についています。