光文社から出ている古典新訳シリーズは読みやすくていいです。いわゆる名作をちゃんと読んでいないので、ちょうどいいです。この作品はある老文豪が、気分転換に訪れたヴェネツィアで美少年に恋をし、最後は病死してしまうお話です。もっぱら老文豪の主観に沿って描写が進みます。美少年とは言葉を交わすこともなく終わるのですが、老文豪の中では嵐が吹き荒れるのです。設定やテーマはもはや新しいとは言えませんが、翻訳であっても、その構成や描写の丁寧さはうかがえます。